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「幽霊」
あるところに幽霊がいました。
幽霊は誰にもみえないし、さわることもできません。
その代わりに幽霊は、一方的に人を驚かすことだけはできました。
幽霊は毎日が退屈なので、道行く人を驚かせて暇つぶしをしていました。
というより、驚かせることしか出来ないからです。
そんなある日、歩いている女の子をいつものように驚かせようとすると
その女の子は驚くことはなく、じっとこちらを見つめていました。
まるで幽霊のことが見えているようでした。
幽霊は、はじめて自分のことがみえる人間に出会い
とても嬉しくなって舞い上がりました。
もうこれで寂しい思いをせずに済みそうです。
その日から、幽霊は女の子の行く末を見守ることにしました。
自分のことが見える大切な人だからです。
女の子が小学校に入学してからも、
女の子が中学校に入学してからも、
女の子が高校に入学してからも、ずっと見守っていました。
女の子は大学受験に差し掛かり、勉強で忙しくなりました。
幽霊は女の子の邪魔をしないように、静かに見守り続けました。
女の子は無事大学にも入学し、いずれ卒業もしました。
幽霊も自分のことのように嬉しくなりました。
女の子は有名な企業に就職しました。
幽霊は幸せになっていく女の子をみてさらに嬉しくなりました。
女の子は仕事でも活躍して、とても忙しく働いていました。
幽霊も大切な女の子が活躍する様子をみて嬉しくなりました。
女の子は素敵な男性に出会い、公私ともに充実した人生を手に入れました。
かつては幼かった女の子も、結婚して、子供まで産まれました。
大切な女の子が幸せそうに過ごす様子をみて、幽霊も幸せな気持ちになりました。
ある日、幽霊は女の子に話しかけようとしましたが、
なぜだか女の子は何一つ反応がありません。
そこで不安になった幽霊は、女の子を驚かせてみました。
すると、女の子は「ぎゃーーーーー」と叫び、驚いて逃げていきました。
幽霊は、自分が幽霊であることを、ただ忘れていただけなのでした。